離断性骨軟骨炎
離断性骨軟骨炎という病名は、聞き慣れない方も多いかもしれません。しかし、スポーツに励む成長期のお子さんや、関節に違和感を抱える若い世代にとって、実は決して珍しくない疾患の一つです。私たちの関節の表面は、滑らかな軟骨で覆われていますが、その土台となる骨の一部が血流不足などによって壊死し、軟骨とともに剥がれ落ちてしまう状態を離断性骨軟骨炎と呼びます。特に膝関節に多く見られますが、肘や足首の関節にも起こることがあります。剥がれた骨や軟骨が「関節ねずみ」として関節内を動き回ると、激しい痛みや、関節が突然動かなくなる「ロッキング」という現象を引き起こすこともあります。20年以上の臨床経験を持つ整形外科専門医として、お子さんの将来の関節の健康を守ることを第一に考えた診療を心がけております。
離断性骨軟骨炎の症状について
離断性骨軟骨炎の症状は、その進行度合いによって大きく変化します。初期段階でははっきりとした痛みがなく、なんとなく重だるいような違和感や、運動した後の軽い痛みとして現れることが多いため、単なる筋肉痛や成長痛と見過ごされてしまうケースも少なくありません。しかし、進行するにつれて以下のような具体的な症状が目立つようになります。
運動時の痛みと腫れ
スポーツ中や、階段の昇り降り、歩行時などに関節の痛みを感じるようになります。また、関節の中に水が溜まる「関節水腫」が起こり、膝や肘が腫れて熱を持つこともあります。これは、壊死した骨の影響で関節内に炎症が起きているサインです。
関節の引っかかり感
関節を動かしたときに、何かが挟まったような「カクッ」とする感覚や、不快な引っかかりを感じることがあります。これは、土台の骨から剥がれかかった軟骨が、関節の動きを邪魔しているために起こります。スムーズな関節の動きが損なわれるため、パフォーマンスの低下を招く原因となります。
ロッキング現象
完全に剥がれ落ちた骨や軟骨の破片(関節遊離体)が、関節の隙間に挟まってしまうと、ある角度から急に動かせなくなる「ロッキング」という状態になります。これは非常に強い痛みを伴い、無理に動かそうとすると関節の表面をさらに傷つけてしまう恐れがあるため、注意が必要です。
筋力の低下と不安定感
痛みによって無意識に関節をかばうようになると、周囲の筋肉が痩せて細くなってしまいます。その結果、関節を支える力が弱まり、「膝がガクッとなる」「力が入りにくい」といった不安定感を感じるようになります。当院では理学療法士によるリハビリテーションを通じて、こうした二次的な機能低下の防止にも力を入れています。
離断性骨軟骨炎の原因について
離断性骨軟骨炎がなぜ起こるのかについては、いくつかの要因が組み合わさっていると考えられていますが、主な原因として以下の要素が挙げられます。
繰り返される過度なストレス
スポーツによる繰り返しの衝撃や、関節への過剰な負担が最大の原因とされています。特に野球の投球動作による肘への負担や、サッカーやバスケットボールでの急なストップ・方向転換による膝への衝撃などが、軟骨下の骨に微細なダメージを蓄積させます。これが疲労骨折のような状態を招き、骨の壊死を引き起こします。
血流障害
関節の軟骨を支えている骨(軟骨下骨)への血の巡りが悪くなることが原因の一つとされています。特定の場所への血流が滞ることで、その部分の骨が栄養不足に陥り、強度が弱くなってしまいます。若年層に多い理由として、成長期の骨は構造的に変化しやすく、血流の状態も不安定になりやすいためと考えられています。
骨格の形やアライメントの影響
生まれつきの骨の形や、いわゆる「X脚」や「O脚」などの脚の並び(アライメント)によって、特定の場所にばかり負担がかかりやすい場合があります。芦屋市のささき整形外科リハビリクリニックでは、単に痛みを取るだけでなく、全身のバランスを評価し、なぜそこに負担がかかっているのかという根本的な原因を追究します。
外傷(ケガ)の既往
過去に経験した大きな捻挫や打撲などがきっかけとなり、時間をかけて離断性骨軟骨炎へと発展することもあります。一度傷ついた箇所が完全に修復されず、そのまま激しい運動を続けることで、軟骨下の骨が徐々に分離していくパターンです。
離断性骨軟骨炎の病気の種類について
離断性骨軟骨炎は、発症する年齢や部位、そして病期のステージによって分類されます。この分類によって治療方針が大きく変わるため、正確な診断が極めて重要です。
発症年齢による分類
- 幼少期・少年型(ジュニア型)・・骨の成長線が閉じる前に発症するタイプです。再生能力が高いため、適切な安静と保存療法で治癒する可能性が比較的高いのが特徴です。
- 成人型・・骨の成長が止まった後に発症、あるいは少年型が治りきらずに残ったタイプです。自然治癒は難しく、手術を検討するケースが多くなります。
発生部位による分類
最も多いのは膝関節(特に大腿骨の内側)ですが、他にも以下のような場所で見られます。
- 肘関節(上腕骨小頭)・・野球少年に多く見られ、「野球肘」の重症型として知られています。
- 足関節(距骨)・・捻挫などの外傷をきっかけに発症することがあります。
進行度(ステージ)による分類
レントゲンやMRI検査の結果に基づき、一般的に以下のような段階に分けられます。
- 初期(透亮期)・・骨の一部が白っぽくなったり、影が見えたりする段階です。軟骨の表面はまだ滑らかで、安定しています。
- 中期(分離期)・・骨の破片が周囲から分離し始めます。軟骨に亀裂が入ることもありますが、まだその場に留まっている状態です。
- 後期(遊離期)・・完全に骨と軟骨が剥がれ、関節の中に飛び出してしまった状態です。これが関節ねずみとなり、ロッキングの原因となります。
離断性骨軟骨炎の治療法について
当院では、患者さんの年齢、スポーツの種目、病気のステージを総合的に判断し、最適な治療計画を立案します。
保存療法(手術を行わない治療)
初期の段階や成長期のお子さんの場合、まずは関節への負担を減らし、骨の自然な修復を待つ治療を行います。
- スポーツ活動の休止・・一定期間、原因となっているスポーツを休み、関節を安静に保ちます。
- 装具療法・・サポーターや装具を使用して、患部にかかる荷重を制限します。
- リハビリテーション・・理学療法士が、患部以外の筋力強化や柔軟性の向上を図り、復帰した際に再発しにくい体作りをサポートします。
手術療法
保存療法で改善が見られない場合や、骨が完全に遊離している場合は手術を検討します。当院の院長は、神戸大学関連病院や神戸労災病院などで数多くの関節手術を執刀してきた実績があります。
- ドリリング(穿孔術)・・軟骨がまだ安定している場合、小さな穴をあけて血流を再開させ、骨の修復を促します。
- 骨軟骨固定術・・剥がれかかった骨を、特殊なピンやネジで元の位置に固定します。
- 骨軟骨移植術・・自分の他の部位から健康な骨軟骨を採取し、欠損部に移植する方法です(モザイクプラスティなど)。
料金について
離断性骨軟骨炎の診断・治療には、健康保険が適用されます。初診料、再診料、レントゲン検査、MRI検査(提携施設)、リハビリテーション料などが含まれます。表示価格は全て税込です。
| 治療内容 | 費用(税込) | 備考 |
|---|---|---|
| PRP(多血小板血漿)療法 | 1回 33,000円 | 自己血液を利用した注入療法 |
| APS(次世代PRP)療法 | 1回 165,000円 | より高濃度の成長因子を抽出 |
※症状や回数によって異なりますので、まずは診察にてご相談ください。
離断性骨軟骨炎についてのよくある質問
Q1. 成長痛だと思って放っておいても大丈夫ですか?
A1. 成長痛との区別は非常に難しいため、放置は危険です。離断性骨軟骨炎は進行すると手術が必要になったり、将来的に変形性関節症の原因になったりすることもあります。運動中の痛みが2週間以上続く場合は、早めに整形外科を受診することをお勧めします。
Q2. どのくらいスポーツを休まなければなりませんか?
A2. ステージや年齢にもよりますが、初期であれば3ヶ月から半年程度のスポーツ制限が必要になることが多いです。その間も、当院では患部に負担をかけない形でのトレーニング指導を行い、体力低下を防ぎます。
Q3. 手術をした場合、入院期間はどのくらいですか?
A3. 手術内容によりますが、内視鏡(関節鏡)を用いた簡易的な手術であれば数日程度の入院、骨移植などの大掛かりな手術では1週間から2週間程度の入院が必要になるのが一般的です。当院で手術を行う場合は、術後のリハビリもしっかりとサポートいたします。
Q4. 野球をしていて肘を痛めましたが、これも離断性骨軟骨炎ですか?
A4. 野球肘の中には離断性骨軟骨炎が含まれます。肘の外側が痛む場合は、この病気の可能性が高いです。早期発見できれば投球制限のみで治ることも多いため、早めの診断が重要です。
院長より
離断性骨軟骨炎という病気は、早期に適切な処置を行えば、再び全力でプレーできる可能性が非常に高い疾患です。しかし一方で、発見が遅れると選手生命に関わるような重大な結果を招くこともあります。私たちのささき整形外科リハビリクリニックでは、丁寧な診察と精密な評価をもとに、一人ひとりのライフスタイルや目標に寄り添った治療を提案いたします。「痛みがあるけれど、どこに相談すればいいかわからない」という方も、どうぞ安心してお越しください。スポーツへの情熱を絶やさないよう、私たちが全力でサポートいたします。
