橈骨遠位端骨折
転倒して手をついた後に手首が急激に腫れ、激しい痛みを感じる場合、それは「橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)」かもしれません。この骨折は、特に骨密度が低下した高齢の女性に多く見られる一方で、スポーツや交通事故など強い衝撃が加わることで若い世代にも起こり得る非常に一般的な疾患です。ささき整形外科リハビリクリニックでは、神戸大学病院や神戸労災病院などの基幹病院で20年以上にわたり培ってきた臨床経験を活かし、単に骨をくっつけるだけでなく手首の機能をもとに戻すことを最優先に考えた診療を行っています。芦屋市海洋町の当院では、精度の高い全身型骨密度測定器を導入しており、骨折の治療だけでなく、その背景にある骨粗鬆症の予防と治療にも力を入れています。手首の変形や痛み、しびれに不安を感じている患者さんに寄り添い、理学療法士による専門的なリハビリテーションを通じて、一日も早い日常生活やスポーツへの復帰をサポートいたします。
橈骨遠位端骨折の症状について
橈骨遠位端骨折を発症すると、受傷直後から手首に非常に強い痛みと腫れが現れます。多くの場合、骨折した部位がずれることによって、手首の形が変形して見えるのが特徴です。この変形は、横から見たときに食器のフォークのように見えることから「フォーク状変形」と呼ばれることもあります。
具体的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 手首の周辺が著しく腫れ、皮下出血が見られる
- 手首を動かそうとすると激痛が走り、反対の手で支えないと保持できない
- 折れた骨が神経を圧迫することで、親指から薬指にかけてしびれが出る
- 指を動かす力が入りにくくなり、グーパーの動きが制限される
特に注意が必要なのは、骨折による強い腫れが神経を圧迫する正中神経麻痺です。指先にしびれを感じたり、感覚が鈍くなったりする場合は、早急な処置が求められます。また、骨折の破片が周囲の腱を傷つけてしまうと、後から指が伸ばせなくなる「長母指伸筋腱断裂」などの合併症を引き起こす可能性もあるため、初期の正確な診断が極めて重要です。
受傷直後は痛みのあまり冷静な判断が難しくなりますが、無理に動かそうとせず、清潔なタオルなどで手首を固定して、できるだけ早く整形外科を受診してください。当院では、レントゲン検査だけでなく、必要に応じて詳細な評価を行い、患者さんの状態を把握することから治療を始めます。
橈骨遠位端骨折の原因について
橈骨遠位端骨折の最も大きな原因は、転倒した際に掌(てのひら)をついて体重がかかることです。手首にある橈骨(とうこつ)という太い骨の端、つまり手首に近い部分に急激な負荷が集中することで骨折に至ります。
この骨折は、患者さんの年齢層によって原因の傾向が異なります。高齢の方の場合、加齢に伴う骨粗鬆症によって骨が脆くなっていることが大きなリスク因子となります。家の中のわずかな段差でつまずいたり、雨の日に滑ったりといった、日常生活の中での比較的軽い転倒でも骨折してしまうケースが少なくありません。芦屋市の当院周辺にお住まいの方々からも、散歩中や家事の最中に転んでしまったというお話をよく伺います。
一方で、若年層やスポーツ愛好家の方々の場合は、より強いエネルギーが加わることで発症します。
- サッカーやラグビーなどのコンタクトスポーツでの転倒
- スケートボードやスノーボードでの激しい転落
- 自転車やバイクによる交通事故
- 高い場所からの転落事故
このように、骨が丈夫であっても、それを上回る強い衝撃が加われば骨折は起こります。また、手首を返す角度や、転倒した際の勢いによって、骨の折れ方やずれの程度が大きく変わります。私たちが診察する際には、どのような状況で転倒したのかを詳しく伺うことで、骨折の隠れたダメージを予測し、適切な治療方針を立てる一助としています。
橈骨遠位端骨折の病気の種類について
ひと口に橈骨遠位端骨折と言っても、骨の折れ方やずれの方向によっていくつかの種類に分類されます。代表的なものには、以下のような名称が付けられています。
コーレス骨折(Colles骨折)
手のひらをついて転んだときに起こる、最も頻度の高い骨折です。折れた骨の端が手の甲側にずれるのが特徴で、横から見るとフォークのように変形します。
スミス骨折(Smith骨折)
手の甲側をついて転んだときに起こる骨折です。コーレス骨折とは反対に、折れた骨の端が手のひら側にずれます。自転車のハンドルを握ったまま転倒した際などに見られることがあります。
バートン骨折(Barton骨折)
骨折線が手首の関節面にまで及んでいる状態です。骨がずれるだけでなく、関節自体が脱臼を伴うことが多いため、慎重な治療が必要となります。
これらに加え、骨が粉々に砕けてしまう「粉砕骨折」や、関節の中にまでヒビが入っているかどうかによって、その後の予後が大きく変わります。関節面に段差が残ってしまうと、将来的に「変形性手関節症」を引き起こし、手首を動かすたびに痛みが出る原因となるためです。
当院では、デジタルレントゲンを用いて多方向から骨折の状態を確認します。骨のずれが許容範囲内であるか、関節面が平滑に保たれているかを細かく分析し、後遺症を残さないための最適な分類と診断を行っています。
橈骨遠位端骨折の治療法について
治療の目的は、骨を正しい位置に戻し、最終的に手首や指の機能を回復させることです。骨のずれの程度や患者さんのライフスタイルに合わせて、保存療法と手術療法のいずれかを選択します。
保存療法(ギプス固定)
骨のずれが少ない場合や、徒手整復(としゅせいふく)という手法で骨を正しい位置に戻せた場合には、ギプスによる固定を行います。
- 徒手整復・・局所麻酔などを行い、医師が手を引いて折れた骨のずれを元に戻します。
- ギプス固定・・通常は4週間から6週間程度の固定が必要です。
- 経過観察・・固定期間中は定期的にレントゲンを撮り、骨が再修正されていないか確認します。
ギプス固定中であっても、指を動かさないと関節が固まってしまうため、早期から指の運動を行うことが非常に大切です。
手術療法(プレート固定)
骨のずれが大きく、徒手整復をしても再びずれてしまう可能性が高い場合や、関節面に大きな段差がある場合には手術を検討します。近年では、ロッキングプレートと呼ばれる薄くて丈夫な金属板を骨にネジで固定する手法が一般的です。
手術のメリットは、骨を強固に固定できるため、手術後数日から手首のリハビリを開始できる点にあります。長期間のギプス固定による関節の拘縮(こうしゅく)を防ぐことができ、早期の社会復帰やスポーツ復帰を目指すことが可能です。
リハビリテーション
治療において最も重要な過程がリハビリです。当院では理学療法士がマンツーマンで、手首の可動域訓練や筋力トレーニングを実施します。
リハビリを怠ると指や手首が固まってしまうため、痛みの範囲内で積極的に動かす指導を行います。当院はリハビリテーションの認定施設として、患者さん一人ひとりの回復状況に合わせたプログラムを提供し、日常生活に不自由がないレベルまでの改善を目指します。
骨粗鬆症の検査と再骨折の予防
特に高齢の方にとって、橈骨遠位端骨折は「身体からのSOS」でもあります。この骨折をした方は、将来的に「股関節(大腿骨近位部)の骨折」を起こすリスクが非常に高いことが知られているからです。股関節を骨折すると、歩行が困難になり、生活の質が著しく低下してしまいます。
ささき整形外科リハビリクリニックでは、骨折の治療と並行して、精度の高い全身型骨密度測定器を用いた検査を推奨しています。
- 背骨(腰椎)と足の付け根(大腿骨)の2箇所で正確に骨密度を測定します。
- 検査結果をもとに、適切な内服薬や注射薬による骨粗鬆症治療を開始します。
- 食事指導や運動療法を組み合わせ、次の骨折を未然に防ぎます。
骨折をただ治すだけでなく、将来の健康を守るための予防医療を提供することが、地域のかかりつけ医としての私たちの役割であると考えています。芦屋市海洋町の落ち着いた環境で、じっくりとご自身の骨の健康に向き合っていただける体制を整えています。
橈骨遠位端骨折についてのよくある質問
Q1. 手首を骨折したら必ず手術が必要ですか?
A1. すべてのケースで手術が必要なわけではありません。骨のずれが小さく、安定している場合はギプス固定による保存療法で十分に治癒が期待できます。ただし、関節面が壊れている場合や、活動性の高い方で早期復帰を希望される場合は、手術の方が良い結果を得られることが多いです。患者さんと相談の上、最適な方法を決定します。
Q2. ギプスをしている間、お風呂はどうすればよいですか?
A2. ギプスは水に濡れると強度が落ちたり、中の皮膚がふやけて炎症を起こしたりするため、濡らさない工夫が必要です。防水カバーやビニール袋、テープを駆使してシャワー浴をすることになります。最近では、取り外し可能な装具に変更できる時期になれば、少しずつ衛生管理もしやすくなります。
Q3. リハビリはいつまで続ける必要がありますか?
A3. 個人差はありますが、骨がくっつくまでの2、3ヶ月間はもちろん、その後も手首の柔軟性や握力が元に戻るまで継続することをお勧めします。多くの方は3ヶ月から半年程度で日常生活に支障がない状態まで回復しますが、重労働やスポーツへの復帰にはもう少し時間がかかることもあります。
Q4. 手術で使用した金属プレートは一生入れたままですか?
A4. 基本的には入れたままでも問題ないように設計されていますが、特に若い方の場合は、数年後に抜去する手術を行うこともあります。高齢の方や、特に違和感がない方の場合は、そのままにしておくことが一般的です。プレートが腱に干渉して痛みを出すような兆候があれば、抜去を検討します。
院長より
手首を骨折するということは、これまでの当たり前の日常が突然奪われるような、とても不安な出来事だと思います。顔を洗う、服を着る、食事をするといった何気ない動作一つひとつが困難になり、心細い思いをされているかもしれません。
私たちは、橈骨遠位端骨折の治療において、単に骨をつなげるだけでなく、患者さんの生活の質を再建することに強いこだわりを持っています。私はこれまで、大学病院や救急センター、労災病院などで数多くの骨折治療に携わってきました。その中で感じたのは、適切な初期治療と、それ以上に「適切な時期からの適切なリハビリテーション」が、その後の人生を大きく左右するということです。
ささき整形外科リハビリクリニックでは、医師による精緻な診断と、理学療法士による温かいサポートを両輪として治療を進めていきます。また、芦屋市の皆さんが再び骨折で辛い思いをしないよう、骨粗鬆症の予防にも全力で取り組んでいます。
もし「これくらいで受診してもいいのかな」と迷われているなら、ぜひ一度私たちのクリニックへお越しください。スタッフ一同、あなたの「動かせる喜び」を取り戻すために誠心誠意お手伝いさせていただきます。どんなに小さな不安でも、お気軽にご相談ください。
