小児が腕を動かさない
小さなお子さんが急に片方の腕を動かさなくなったり、だらんと下げたままにしていたりする姿を見ると、親御さんは「どこか折れているのではないか」「一生動かなくなったらどうしよう」と非常に大きな不安を感じることでしょう。特に、少し前まで元気に遊んでいたのに、手を引っ張った直後や転倒した後に急に泣き出し、片手を使わなくなるケースは小児整形外科の臨床現場でよく見られる光景です。このような症状の多くは「肘内障(ちゅうないしょう)」と呼ばれる、肘の関節が亜脱臼に近い状態になっていることが原因ですが、中には鎖骨や肘周辺の骨折が隠れている場合もあり、慎重な見極めが求められます。私たちささき整形外科リハビリクリニックでは、20年以上の病院での臨床経験を持つ整形外科専門医が、お子さんの小さなサインを見逃さないよう丁寧に診察を行います。芦屋市海洋町という落ち着いた環境の中で、最新の知見に基づきつつも、お子さんが怖がらないようなやわらかい対応を心がけています。超音波検査(エコー)などを用いて、放射線被曝を抑えながら迅速に原因を特定し、その場で適切な処置を行うことで、多くのお子さんが笑顔を取り戻して帰宅されています。もしお子さんの腕の様子がおかしいと感じたら、無理に動かそうとせず、まずは当院へご相談ください。
小児が腕を動かさないの原因
お子さんが腕を動かさなくなる原因は、年齢やその直前の状況によっていくつか考えられます。最も頻度が高いのは、先ほども触れた肘内障です。これは2歳から4歳くらいのお子さんに多く見られる症状で、肘の関節にある「橈骨輪状靭帯(とうこつりんじょうじんたい)」というバンドのような組織から、腕の骨(橈骨)の頭の部分が半分抜けかかってしまう状態を指します。
典型的には、以下のような場面で発生することが多いです。
- 子供が転びそうになったので、慌てて手を引っ張った
- 手をつないで歩いているときに、子供が急に座り込んだ
- 布団の上などでゴロゴロと転がって遊んでいた
- 服の袖に手を通そうとして、腕をひねるような力が加わった
肘内障以外で注意しなければならないのが、骨折です。お子さんの骨は大人に比べて柔らかく、完全にポキッと折れるのではなく、木の枝がしなるように折れる「若木骨折(わかぎこっせつ)」という形態をとることがあります。特に鎖骨骨折は、高いところから落ちたり、肩を強く打ったりした際に起こりやすく、腕を上げようとすると痛みが出るため、腕全体を動かさなくなることがあります。
また、肘の関節のすぐ上の骨が折れる「上腕骨顆上骨折(じょうわんこつかじょうこっせつ)」も重要です。これは転んで手をついた衝撃で起こりやすく、非常に強い痛みと腫れを伴います。この骨折は血管や神経を圧迫するリスクがあるため、整形外科専門医による緊急の判断が必要なケースです。
まれなケースとしては、化膿性関節炎(かのうせいかんせつえん)などの感染症が原因で、関節の中に膿が溜まり、痛みで動かせなくなることもあります。この場合は、腕を動かさないだけでなく、高熱が出たり、関節が赤く腫れたりするのが特徴です。
小児が腕を動かさないによって引き起こされる病気
「腕を動かさない」という初期症状から、適切な処置が遅れることで深刻な状態へつながる病気や、背景に潜んでいる疾患がいくつか存在します。
まず、骨折を見逃してしまった場合、骨が曲がったままくっついてしまう「変形治癒(へんけいちゆ)」のリスクがあります。お子さんの骨には「自家矯正(じかきょうせい)」といって、成長とともに多少の曲がりは自然に治る力が備わっていますが、肘周辺の骨折などはその力が及びにくい部位もあり、将来的に腕が外側に反ってしまう「外反肘(がいはんちゅう)」などの変形を残す可能性があります。
特に注意が必要なのが、神経障害や血流障害を伴う疾患です。上腕骨顆上骨折の合併症として知られるフォルクマン拘縮は、骨折による腫れで腕の血流が途絶え、筋肉や神経が死んでしまう非常に恐ろしい病態です。一度筋肉が壊死してしまうと、手の指が曲がったまま固まってしまい、一生残る機能障害を招く恐れがあります。そのため、指先が冷たくなっていないか、色が白くなっていないか、感覚が鈍くなっていないかを専門医が慎重にチェックします。
また、何度も肘内障を繰り返す「反復性肘内障」の状態になると、親御さんも「またか」と慣れてしまうことがありますが、成長に伴い靭帯がしっかりしてくれば自然に起こらなくなります。しかし、頻繁に外れる裏に、関節の緩さ(関節弛緩性)などの体質的な特徴が隠れていることもあります。
そのほか、脱臼や骨折が疑われる場面がないにもかかわらず、腕を動かさない状態が続く場合は、小児リウマチや、骨の中に腫瘍ができる疾患など、整形外科的な全身疾患の初期症状である可能性もわずかながら否定できないため、多角的な視点での診察が欠かせません。
小児が腕を動かさないの処置や治療法
ささき整形外科リハビリクリニックでは、お子さんが「腕を動かさない」という主訴で来院された際、まずは外傷のエピソードを詳しく伺い、視診と触診で痛みの中心がどこにあるかを探ります。
原因が肘内障であると確信が持てる場合は、その場ですぐに「整復(せいふく)」を行います。整復とは、外れかかっている骨を元の位置に戻す処置のことです。多くの場合、肘を曲げながら前腕を回すような手技を行います。処置の瞬間は少し泣いてしまうお子さんもいますが、骨が正しい位置にカチッと戻れば、数分から15分程度でケロッとして腕を使い始めます。待合室でおもちゃを掴んだり、バンザイができたりすることを確認できれば、治療は完了です。
もし、整復を行っても腕を動かさない場合や、腫れ・熱感がある場合は、レントゲン検査を行います。当院では、お子さんへの負担を最小限にするため、必要最小限の枚数で正確な撮影を行います。また、骨がまだ軟骨成分でできている小さなお子さんの場合、レントゲンだけでは骨折の線が見えにくいことがあります。そこで有用なのが超音波検査(エコー)です。エコーは放射線の心配がなく、リアルタイムで骨の表面の段差や、関節の中に溜まった血液を確認できるため、小さな骨折の診断に非常に役立ちます。
骨折と診断された場合の治療法は以下の通りです。
- 鎖骨骨折・・多くの場合、クラビクルバンドという背負い式の固定具を装着し、3週間から4週間ほど安静にすることで骨がくっつきます。
- 肘周辺の軽微な骨折・・シーネと呼ばれる添え木やギプスを用いて、数週間固定します。
- 重度の骨折・・骨のズレ(転位)が大きい場合は、大きな病院と連携し、手術が必要になることもあります。当院長は長年、神戸労災病院などの基幹病院で部長を務めていた経験から、適切なタイミングで高度医療機関へご紹介するネットワークを持っています。
固定期間が終わった後は、理学療法士によるリハビリテーションが重要です。関節が硬くならないよう、遊びの要素を取り入れながら、自然な動きを取り戻すサポートを行います。
小児が腕を動かさないについてのよくある質問
Q1.夜中に子供が腕を動かさなくなりました。明日の朝まで待っても大丈夫ですか?
A1.お子さんがぐっすり眠れているようであれば、翌朝一番の受診でも間に合うことが多いです。ただし、指先の色が紫や白になっている、パンパンに腫れている、冷や汗をかいて泣き止まないといった場合は、緊急の血流障害や骨折の可能性があるため、救急外来への受診を検討してください。肘内障であれば、朝まで待っても後遺症が残ることはありませんが、痛みは続きます。
Q2.肘内障の整復後に、またすぐ外れることはありますか?
A2.整復直後は靭帯が緩みやすくなっているため、当日はなるべく腕を強く引っ張らないように気をつけてください。5歳から6歳くらいになり、靭帯が厚く丈夫になれば、自然と外れなくなります。それまでは、手を引くときも手首ではなく肩に近い部分を支えるなどの工夫をすると予防になります。
Q3.レントゲンは子供の体に悪影響はありませんか?
A3.整形外科で行う手足のレントゲン撮影の放射線量は非常に微量であり、将来の健康に影響が出るレベルではありません。正確な診断をせずに骨折を見逃す不利益の方が大きいため、必要と判断した場合にはお勧めしています。当院ではエコー検査を併用することで、なるべく撮影枚数を減らす工夫もしています。
Q4.一度腕を痛めた後、スポーツを再開するのはいつからが良いですか?
A4.原因が肘内障であれば、整復された直後から普段通りの生活を送って構いません。骨折の場合は、骨のくっつき具合をレントゲンで確認しながら、段階的に復帰を判断します。当院はスポーツ整形外科も専門としておりますので、競技特性に合わせた復帰プログラムを提案いたします。
院長より
お子さんの突然の怪我や痛みは、ご本人以上に親御さんの心を痛めさせるものです。「自分が手を引っ張ってしまったせいだ」とご自身を責めてしまうお母さんやお父さんもいらっしゃいますが、肘内障などは日常の何気ない動作で起こりうるもので、決して親御さんの責任ではありません。大切なのは、異変に気づいたときに適切な処置を受けさせてあげることです。
私、佐々木は、これまで20年以上にわたり、大学病院や地域の中核病院で数多くの小児整形外科疾患に向き合ってきました。
ささき整形外科リハビリクリニックは、芦屋市にお住まいの皆様にとっての「かかりつけ医」として、お困りのときにいつでも頼っていただける存在でありたいと考えています。お子さんの腕の動きに少しでも不安を感じたら、迷わず当院のドアを叩いてください。専門医の確かな技術と、スタッフ全員の温かいサポートで、お子さんの健やかな成長を全力でお守りします。
