変形性肩関節症
変形性肩関節症は、肩の関節をスムーズに動かす役割を担っている軟骨が、加齢や使いすぎによって少しずつすり減り、関節内に炎症が起きたり骨が変形したりする疾患です。肩の痛みでよく知られる四十肩や五十肩と似た症状が出るため、ご自身で判断して放置されやすい傾向にありますが、進行すると腕を上げることすら困難になり、日常生活に大きな支障をきたしてしまいます。私たちささき整形外科リハビリクリニックでは、神戸大学病院や神戸労災病院などの基幹病院で20年以上にわたり研鑽を積んできた院長が、一人ひとりの肩の状態を精密に診断いたします。肩の痛みは、適切な治療によって改善できる可能性が十分にあります。最新の知識と温かみのある医療で、皆さんの快適な生活を取り戻すお手伝いをいたします。
変形性肩関節症の症状について
変形性肩関節症の初期段階では、肩を動かしたときに「なんとなく重だるい」「時々チクッと痛む」といった、かすかな違和感から始まることが一般的です。しかし、病状が進行するにつれて、痛みはより強く、かつ日常的なものへと変化していきます。ここでは、多くの患者さんが経験される主な症状について解説します。
動作時の痛みと可動域の制限
最も代表的な症状は、腕を動かしたときに生じる痛みです。特に、服を着替えるときや背中のファスナーを上げるとき、あるいは高いところにある物を取ろうとするときなど、肩を特定の方向にひねったり上げたりする動作で鋭い痛みを感じます。また、軟骨がすり減ることで関節の滑りが悪くなり、物理的に肩が上がらなくなる可動域制限が生じます。
夜間痛による睡眠の質の低下
炎症が強くなると、日中動かしているときだけでなく、夜寝ているときにも痛みが出るようになります。これを夜間痛と呼びます。寝返りを打つたびに痛みで目が覚めてしまったり、痛くない方の肩を下にしてしか寝られなかったりと、睡眠不足を招く深刻な悩みとなることも少なくありません。
軋轢音(ジョリジョリという音)
関節の変形が進むと、肩を動かした際に「ジョリジョリ」「ゴリゴリ」といった嫌な音が聞こえたり、手で触れると振動を感じたりすることがあります。これは、軟骨が消失して露出した骨同士が直接こすれ合っているサインです。この状態を放置すると、さらに骨の変形(骨棘と呼ばれる骨のトゲ)が進行し、痛みがより増強されるという悪循環に陥ってしまいます。
変形性肩関節症の原因について
なぜ肩の関節が変形してしまうのでしょうか。その原因は大きく分けて、特定の原因がはっきりしないものと、過去の怪我などがきっかけとなるものの2つのパターンがあります。これらを引き起こす要素を、私たちはリスク因子(病気になる可能性を高める要素)と呼んで注意深く診察しています。
加齢と関節の経年変化
最も多い原因は、加齢に伴う関節軟骨の摩耗です。長年肩を使い続けてきたことによる蓄積疲労が、少しずつ軟骨を減らしていきます。特に重いものを持つ仕事に従事されていた方や、肩を酷使するスポーツを長く続けてこられた方に多く見られる傾向があります。これは膝の変形性膝関節症と同様に、誰にでも起こりうる変化の一つといえます。
過去の怪我や疾患の影響
若い頃に経験した肩の脱臼や骨折、あるいは腱板断裂(けんばんだんれつ - 肩を支える筋肉の筋が切れること)などの既往歴がある場合、数年から数十年を経て変形性肩関節症へと進展することがあります。関節の構造が少しでも変化した状態で使い続けることで、一部の軟骨に無理な負担がかかり続けるためです。
血行障害や代謝性の要因
稀ではありますが、ステロイド薬の長期使用や過度な飲酒などにより、肩の骨への血流が悪くなる「骨壊死(こつえし)」という病態が隠れていることもあります。また、リウマチなどの炎症性疾患が原因で関節が破壊されるケースもあり、当院では日本整形外科学会認定リウマチ医としての専門知識を活かし、背景にある真の原因を見極めることに力を入れています。
変形性肩関節症の病気の種類について
変形性肩関節症は、その成り立ちによって主に2つのタイプに分類されます。どちらのタイプかによって、今後の見通しである予後(病状が将来的にどのようになっていくかの予測)や治療戦略が異なります。
一次性変形性肩関節症
明らかな原因となる怪我や病気がないにもかかわらず、加齢や使いすぎによって発症するタイプです。
- 主に高齢の方に多く見られる。
- ゆっくりと時間をかけて進行する。
- 両方の肩に症状が出ることがある。
二次性変形性肩関節症
何か別の原因があって、その結果として関節の変形が起こるタイプです。
- 腱板断裂性関節症・・肩のインナーマッスルである腱板が大きく切れたまま放置され、関節のバランスが崩れて発症するもの。
- 外傷後関節症・・骨折や脱臼などの怪我がきっかけとなるもの。
- 特発性骨壊死に伴うもの・・骨の血流障害が原因で骨が潰れて変形するもの。
- 感染やリウマチ性関節症・・関節内の細菌感染や免疫の異常によるもの。
診察時には、レントゲン検査や全身型骨密度測定器を用いた評価を行い、時にはMRI検査などを組み合わせて、これらの分類を「否定(特定の病名ではないと判断すること)」しながら慎重に診断を確定させていきます。
変形性肩関節症の治療法について
ささき整形外科リハビリクリニックでは、いきなり手術を勧めることはありません。まずは痛みを取り除き、肩の機能を回復させるための保存療法を徹底して行います。
お薬と注射による除痛
強い炎症がある場合は、痛み止めの内服や湿布に加え、関節内への注射を行います。ヒアルロン酸注射は関節の滑りを良くし、軟骨の摩耗を抑える効果が期待できます。痛みが非常に強い場合には、一時的にステロイド注射を併用して炎症を落ち着かせることもあります。
理学療法士によるリハビリテーション
当院が最も重視している治療の一つが、理学療法士による個別リハビリです。肩が痛いからといって動かさないでいると、周囲の筋肉や関節包(関節を包む袋)が硬くなり、さらに肩が動かなくなるという悪循環に陥ります。
- 硬くなった筋肉をほぐす徒手療法。
- 肩甲骨の動きをスムーズにするトレーニング。
- 正しい姿勢や生活動作の指導。
これらを通じて、肩にかかる負担を最小限に抑え、スムーズな動きを取り戻します。
PRP(多血小板血漿)療法
患者さんご自身の血液から、組織の修復を助ける成長因子を多く含む成分(PRP)を抽出し、肩の関節内に注射する治療法です。ご自身の血液を利用するため、アレルギー反応のリスクが低く、炎症を抑え組織の修復を促す効果が期待できます。
手術療法への橋渡し
骨の変形が極めて高度で、保存療法でも痛みが改善せず、日常生活に著しい支障がある場合には、人工肩関節置換術などの手術が必要になることもあります。その際は、院長が長年勤務していた神戸労災病院や神戸大学附属病院など、信頼できる高度医療機関へ責任を持ってご紹介し、術後のリハビリは再び当院で継続して行える連携体制を整えています。
変形性肩関節症についてのよくある質問
Q1. 四十肩や五十肩とは何が違うのですか?
A1. 四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)は、主に筋肉や関節包の炎症が原因で、適切な治療とリハビリで多くの場合、元の状態に近いところまで寛解(症状が落ち着いて安定すること)します。一方、変形性肩関節症は「軟骨のすり減り」や「骨の変形」という構造的な変化が起きている状態です。レントゲンを撮れば骨のトゲや関節の隙間の減少がはっきりと確認できる点が大きな違いです。
Q2. 一度変形した骨は元に戻りますか?
A2. 残念ながら、一度変形してしまった骨の形や、すり減ってしまった軟骨を自然に元の形に戻すことは現在の医学では困難です。しかし、治療の目的は骨の形を戻すことではなく「痛みを取り除き、不自由なく動かせるようにすること」です。適切な治療とリハビリによって、変形があっても痛みなく生活されている方はたくさんいらっしゃいます。
料金について
変形性肩関節症の診療に関する費用の目安です。保険診療の場合は、厚生労働省が定める診療報酬に基づき計算されます。
| 項目 | 内容 | 費用の目安(3割負担の場合) |
|---|---|---|
| 初診料・検査料 | 診察、レントゲン検査など | 約3,000円 - 5,000円 |
| リハビリテーション | 理学療法士による個別リハビリ(1単位20分) | 約600円 - 1,800円 |
| 関節内注射 | ヒアルロン酸注射など(薬剤費含む) | 約1,000円 - 2,000円 |
※再診料や処方箋料などは別途かかります。
院長より
「最近、肩が上がりにくくなったけれど、もう歳だから仕方ない」と諦めてはいませんか。肩の痛みは、ただの「使いすぎ」や「老化」で片付けられるものではありません。変形性肩関節症という病態を正確に捉え、早期に適切な介入を行うことで、手術を避け、再び生き生きとスポーツを楽しんだり、家事や仕事をこなしたりできるようになる可能性は十分にあります。
私はこれまで20年以上にわたり、大学病院や地域の中核病院で数多くの肩や膝の関節疾患と向き合ってきました。
私たちのクリニックでは、理学療法士と密に連携し、患者さん一人ひとりのライフスタイルに合わせたオーダーメイドの治療プログラムを提案します。芦屋の地で、ご高齢の方からスポーツ愛好家の方まで、誰もが安心して相談できる温かいクリニックでありたいと考えています。「こんな些細な痛みで行ってもいいのかな」と迷う必要はありません。その違和感こそが、健康な肩を取り戻すための大切なサインです。ぜひ一度、ささき整形外科リハビリクリニックにご相談ください。
