単純性股関節炎
お子さんが急に「足が痛くて歩けない」と言い出したり、足を引きずるようにして歩いていたりすると、親御さんはとても驚き、心配されることでしょう。このような時、子供の股関節疾患の中で最も頻繁に見られるのが単純性股関節炎です。この病気は、主に3歳から10歳くらいまでのお子さんに多く発症し、急激に股関節の痛みや歩行障害が現れるのが特徴です。私たちのクリニックがある芦屋市海洋町周辺でも、元気なお子さんが突然歩けなくなったと相談に来られるケースは少なくありません。多くの場合は適切な安静によって1週間から10日ほどで自然に回復していきますが、中には「化膿性股関節炎」という緊急を要する重大な病気が隠れている可能性もあるため、整形外科専門医による慎重な判断が必要です。ささき整形外科リハビリクリニックでは、20年以上の臨床経験を持つ院長が、お子さんの小さなサインを見逃さないよう丁寧に診察を行います。超音波検査(エコー)などを用いて、関節の中に水が溜まっていないか、炎症の程度はどのくらいかを詳しく確認し、ご家族が安心して見守れるようわかりやすく説明することを大切にしています。お子さんの健やかな成長をサポートし、早期に大好きなスポーツや遊びに復帰できるよう努めています。
単純性股関節炎の症状について
単純性股関節炎の症状は、ある日突然始まることがほとんどです。昨日まで元気に走り回っていたお子さんが、朝起きたら「足の付け根が痛い」と泣き出したり、立ち上がろうとしても足を引きずったり(跛行:はこう)するようになります。症状の出方はお子さんによって様々ですが、代表的なものをいくつか挙げてみましょう。
歩き方の異常と痛み
最も典型的な症状は、歩き方の変化です。痛みを避けるために、片方の足をかばうように歩く姿が見られます。また、小さなお子さんの場合、痛みの場所を正確に伝えられず「膝が痛い」「太ももが痛い」と訴えることも珍しくありません。これは「関連痛」と呼ばれ、股関節の痛みを脳が別の場所の痛みとして認識してしまう現象です。股関節を動かそうとすると強く痛むため、おむつ替えを嫌がったり、抱っこをせがんだりすることも、大切なサインの一つとなります。
可動域の制限
股関節の動きが制限されることも大きな特徴です。特に、足を外側に広げる動き(外転)や、内側にひねる動き(内旋)をしようとすると、痛みのために途中で止まってしまいます。当院の診察では、お子さんがリラックスした状態で股関節を優しく動かし、どの方向にどの程度の制限があるかを慎重に確認します。無理に動かしてお子さんに恐怖心を与えないよう、細心の注意を払って診察を進めてまいります。
軽度の発熱や全身状態
多くの場合、全身状態は良好ですが、まれに37度台の微熱を伴うことがあります。もし、38度を超えるような高熱が出ている場合は、単純性股関節炎ではなく、後述する細菌感染による病気の可能性を考慮しなければなりません。また、食欲がない、ぐったりしているといった様子がないかも、ご家庭で注意深く観察していただきたいポイントです。
単純性股関節炎の原因について
単純性股関節炎の明確な原因は、実はまだ完全には解明されていません。しかし、臨床の現場ではいくつかのきっかけが関連していると考えられています。
ウイルス感染との関連
最も多く見られるパターンは、発症の1週間から2週間ほど前に風邪(上気道炎)をひいていたり、中耳炎や胃腸炎にかかっていたりするケースです。ウイルスの感染に対する体の免疫反応が、股関節の「滑膜(かつまく)」という組織に一時的な炎症を引き起こすのではないかという説が有力です。滑膜に炎症が起こると、関節の中に「関節液」と呼ばれる水が過剰に溜まり、それによって関節包が引き伸ばされて痛みが生じます。
アレルギーや外傷の可能性
体質的なアレルギー反応が関与しているという考え方や、激しい運動や転倒などの小さなけが(外傷)が引き金になるという意見もあります。活発に動き回る年齢のお子さんに多いため、知らず知らずのうちに股関節に負担がかかっていることも否定(病気ではないと判断すること)できません。当院では、最近の体調変化や運動の状況などを詳しく伺いながら、背景にある原因を探っていきます。
単純性股関節炎の病気の種類について
単純性股関節炎自体に種類があるわけではありませんが、重要なのは「似たような症状を出す他の病気」との見分け(鑑別診断)です。これらを正しく判断することが、お子さんの健康を守る上で極めて重要です。
化膿性股関節炎との違い
最も警戒すべきなのは、股関節の中に細菌が入り込んで膿が溜まる「化膿性股関節炎」です。これは整形外科における緊急疾患であり、放置すると関節の軟骨が破壊され、一生残るような障害が生じるリスク因子となります。化膿性の場合は、高熱が出ることが多く、痛みも非常に強烈で足を一歩も動かせなくなります。血液検査で炎症の数値が著しく高いのが特徴です。
ペルテス病
大腿骨の頭の部分(大腿骨頭)への血流が悪くなり、骨が壊死してしまう病気です。単純性股関節炎と初期の症状が非常によく似ていますが、痛みが長期間(数週間から数ヶ月)続いたり、良くなったり悪くなったりを繰り返したりします。レントゲン検査で骨の変化を確認する必要がありますが、初期段階では変化が出にくいため、経過を注意深く追うことが必要です。
大腿骨頭すべり症
主に思春期の、少し体格の良いお子さんに多く見られる病気です。成長板のところで骨がずれてしまうもので、これも手術が必要になるケースが多い重大な疾患です。歩き方の異常や痛みは共通していますが、発症する年齢層や体格、レントゲン画像での特徴が異なります。
単純性股関節炎の治療法について
単純性股関節炎の治療の基本は、驚くほどシンプルですが、安静に尽きます。炎症が治まるのを待つことが、最も確実で近道な方法です。
自宅での安静と過ごし方
診断がついた後は、基本的に自宅での安静をお願いしています。具体的には、走ったり跳ねたりといった激しい運動を控え、できるだけ布団やソファーの上でゆったりと過ごしていただきます。学校や幼稚園も、痛みが強い数日間はお休みすることをお勧めしています。無理をして歩かせると、関節液がさらに溜まって痛みが長引く原因となりますので、移動の際は親御さんが抱っこしてあげるなど、股関節に体重がかからない工夫をしてください。
お薬による治療
痛みが強く、夜眠れないような場合や、お子さんが不機嫌で辛そうな場合には、炎症を抑えるための鎮痛剤(消炎鎮痛剤)を処方することがあります。坐薬や飲み薬など、お子さんが使いやすい形を選びます。これによって炎症が早く治まり、痛みが和らぐことが期待できます。
超音波検査(エコー)による経過観察
当院では、診察室で速やかに行える超音波検査を活用しています。関節の中にどれくらい水が溜まっているかをリアルタイムで確認し、治療の経過を客観的に評価します。水が減ってきていることが視覚的にわかると、親御さんにとっても大きな安心材料になります。また、症状が落ち着いてきた段階で、少しずつ日常生活に戻るためのアドバイスを理学療法士と共に行うことも可能です。
単純性股関節炎についてのよくある質問
Q1. 病院へ行くタイミングはいつが良いですか?
A1. お子さんが足を引きずっていたり、痛みで歩きたがらなかったりする場合は、様子を見ずに早めに整形外科を受診してください。特に、熱がある場合や、痛みがどんどん強くなっている場合は、緊急を要する病気の可能性もあるため、早急な診察が必要です。
Q2. どのくらいで元の生活に戻れますか?
A2. 個人差はありますが、多くのお子さんは3日から1週間ほどで痛みが落ち着き、10日ほどで元通り歩けるようになります。スポーツへの復帰については、痛みが完全になくなり、診察で股関節の動きが元に戻っていることを確認してからになります。焦って再発させないよう、段階的に復帰していきましょう。
Q3. 再発することはありますか?
A3. 単純性股関節炎は、一度良くなっても再び風邪などをきっかけに再発することがあります。しかし、成長とともに発症しにくくなるのが一般的です。再発した場合も、基本的には同じように安静にすることで快方に向かいますが、念のため都度、専門医によるチェックを受けるのが安心です。
Q4. レントゲン検査は必ず必要ですか?
A4. 骨折や他の骨疾患(ペルテス病など)がないかを確認するために、多くの場合はレントゲン検査を行います。当院では最小限の被ばくで済むよう配慮して撮影を行います。さらに、レントゲンでは映らない関節の水溜まりを確認するために、エコー検査を併用することが当院の特徴です。
院長より
お子さんの足の痛みは、ご家族にとって本当に心配なものですよね。私自身、20年以上の整形外科医としてのキャリアの中で、数えきれないほどの「歩けなくなったお子さん」を診てきました。芦屋市海洋町のこのクリニックを開院した理由の一つは、地域の皆様が困った時にすぐに専門的な医療にアクセスできる場所を作りたいという思いからです。単純性股関節炎は、多くの場合、予後(病気のその後の経過)が良好で、後遺症を残すことなく改善する病気です。しかし、そこに至るまでの「診断」には非常に高い専門性が求められます。化膿性股関節炎のような重大な病気を確実に否定し、お子さん一人ひとりに合った適切な休息の取り方を指導することが、私たちの役割です。
私たちは、単純性股関節炎の診療において、単にお薬を出すだけでなく、親御さんの不安に寄り添うことを大切にしています。芦屋市周辺にお住まいで、お子さんの歩き方や足の痛みについて少しでも気になることがあれば、どうぞ遠慮なくささき整形外科リハビリクリニックへお越しください。広いリハビリ室も完備しております。お子さんが再び笑顔で走り回れる日が一日も早く来るよう、私たちが全力でサポートいたします。
