内側膝蓋大腿靭帯損傷
膝の「お皿」が外側にずれないように支えている大切な組織、それが内側膝蓋大腿靭帯(ないそくしつがいだいたいじんたい)です。英語の略称でMPFLとも呼ばれます。スポーツ中や日常生活での不意な動作で膝のお皿が外側に外れてしまう「膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)」が起こった際、この靭帯は高確率で損傷してしまいます。膝の前面に強い痛みや腫れが生じ、一度損傷するとお皿の安定性が損なわれ、何度も脱臼を繰り返す「反復性脱臼」に移行することも少なくありません。膝の不安定感や脱臼後の違和感にお悩みの方は、我慢せずにぜひ当院へご相談ください。
内側膝蓋大腿靭帯損傷の症状について
内側膝蓋大腿靭帯損傷の多くは、膝蓋骨(膝のお皿)が外側に脱臼した際に発生します。脱臼した瞬間に「ガクッ」という衝撃とともに激しい痛みを感じ、その後、膝の前面から内側にかけて強い腫れが生じるのが一般的な経過です。受傷直後は膝を動かすことが困難になり、歩行にも支障をきたすことが多く見られます。特に膝の内側、お皿の縁の部分を押すと強い痛み(圧痛)を感じるのが特徴的です。
脱臼が自然に元の位置に戻った場合でも、靭帯が伸びたり切れたりしていると、膝の不安定感が残ります。患者さんの多くは膝が抜けるような不安感を訴えられます。これを「Apprehension sign(不安感徴候)」と呼び、膝のお皿を外側に押されるような動作に対して、無意識に恐怖心を感じて筋肉がこわばってしまう現象が見られます。これは日常生活の中で階段を降りる時や、スポーツで急な方向転換をする際などに顕著に現れます。
また、損傷が慢性化したり脱臼を繰り返したりすると、膝関節内の軟骨が損傷し、膝を動かすたびに「ゴリゴリ」という異音がしたり、引っかかり感が出たりすることもあります。症状が進行すると、関節内に水が溜まる「関節水腫」を頻繁に起こすようになり、重だるい痛みや曲げ伸ばしの制限が続くようになります。私たち「ささき整形外科リハビリクリニック」では、こうした症状の細かな変化を見逃さないよう、丁寧な診察を行っています。
内側膝蓋大腿靭帯損傷の原因について
この靭帯を損傷する最大の原因は、スポーツや事故による転倒、激しい接触などによる膝蓋骨の脱臼です。具体的には、ラグビーやサッカー、バスケットボールなどのコンタクトスポーツにおいて、足をついた状態で急激に体をひねったり、膝の外側から強い衝撃を受けたりした際に、お皿が外側へとはじき出され、それを引き留めようとする内側の靭帯が耐えきれずに断裂してしまいます。
しかし、単なる外傷だけでなく、個人の身体的な特徴、いわゆる素因が深く関わっていることも少なくありません。以下のような特徴を持つ方は、比較的弱い力でも靭帯を損傷しやすい傾向にあります。
- 大腿骨の溝(膝蓋面)が浅い「大腿骨滑車部異形成」がある方
- 膝のお皿の位置が通常より高い「高位膝蓋骨」の方
- X脚(外反膝)が強く、お皿を外側に引っ張る力が常に働いている方
- 全身の関節が柔らかい「関節弛緩性」をお持ちの方
これらの要因が重なると、一度の怪我で靭帯が治りきらず、その後も軽微な動作で脱臼を繰り返すようになってしまいます。私たちは診察において、単に損傷した部位を見るだけでなく、なぜその怪我が起こったのかという身体の構造的な特徴まで詳細に評価します。芦屋駅周辺からも通いやすい当院では、MRI検査などを用いて靭帯の状態だけでなく、周囲の軟骨や骨の形状まで正確に把握し、根本的な原因を究明することを大切にしています。
内側膝蓋大腿靭帯損傷の病気の種類について
内側膝蓋大腿靭帯損傷は、その経過や状態によっていくつかの段階に分けられます。それぞれの状態に応じて治療方針が大きく異なるため、自分の病態がどれに該当するのかを知ることが非常に重要です。
急性内側膝蓋大腿靭帯損傷
初めて脱臼を起こした直後の状態を指します。靭帯が完全、あるいは部分的に断裂しており、関節内に血が溜まっていることもあります。この段階で適切な固定とリハビリテーションを行えば、手術をせずに治癒する可能性もありますが、軟骨の骨折(骨軟骨骨折)を合併している場合は注意が必要です。受傷直後の適切な評価が、将来の再発リスクを左右します。
反復性膝蓋骨脱臼
一度の損傷で靭帯が緩んだまま治ってしまい、その後、何度も脱臼を繰り返す状態です。こうなると、スポーツ中だけでなく、日常生活で寝返りを打った際や、椅子から立ち上がる際などにもお皿が外れるようになってしまいます。靭帯の支持能力が著しく低下しており、お皿を支える力が機能していない状態と言えます。
習慣性膝蓋骨脱臼
膝を曲げるたびに毎回必ずお皿が脱臼してしまう、より重症な状態です。子供の頃からの骨の形状や筋肉のバランスの異常が強く関与していることが多く、日常生活への支障も大きくなります。この場合、内側の靭帯だけでなく、周囲の広範囲な組織の再建が必要になることが一般的です。
内側膝蓋大腿靭帯損傷の治療法について
治療の目標は、膝の安定性を取り戻し、脱臼への不安をなくして、スポーツや日常生活に自信を持って復帰していただくことです。症状の重さや患者さんのライフスタイルに合わせて、保存療法、手術療法の2つの大きな柱から選択します。
保存療法(リハビリテーションと装具)
初回脱臼や損傷が軽い場合、まずは手術をしない保存療法が検討されます。最初の数週間は装具やサポーターを用いて膝を安定させ、靭帯の修復を待ちます。同時に極めて重要なのが、理学療法士による運動療法です。お皿を内側に引き寄せる役割を持つ「内側広筋(ないそくこうきん)」という太ももの筋肉を鍛えたり、股関節や足首の柔軟性を高めて膝への負担を減らしたりします。当院では経験豊富な理学療法士が、個別のプログラムを作成して指導にあたります。
手術療法(MPFL再建術)
脱臼を繰り返し、日常生活やスポーツに支障が出ている場合は、手術による靭帯の再建が最も確実な方法となります。ご自身の他の部位の腱(半腱様筋など)を用いて、新しく強い靭帯を作り直す「MPFL再建術」が一般的です。院長はこれまで数多くの膝関節手術を執刀しており、高度な技術を要する再建術についても専門的な知見を有しています。手術が必要と判断される場合は、提携する高度医療機関と連携しながら、術前術後のリハビリを当院で一貫してサポートいたします。
料金について
当院で行う一般的な保険診療(診察、投薬、リハビリテーション、レントゲン検査など)については、健康保険の負担割合に応じた費用となります。
内側膝蓋大腿靭帯損傷についてのよくある質問
Q1. 膝のお皿が外れても自然に戻ったのですが、受診は必要ですか?
A1. はい、必ず受診してください。お皿が戻っても、内側の靭帯が伸びたり切れたりしている可能性が非常に高く、また、外れた際に軟骨が剥がれて「関節ネズミ(離断性骨軟骨炎)」の原因になることもあります。早期に適切な診断を受けることが、将来の脱臼癖を防ぐために不可欠です。
Q2. スポーツへの復帰はいつ頃になりますか?
A2. 損傷の程度や治療法により大きく異なります。保存療法の場合、痛みが落ち着き、筋肉バランスが整うまでの3ヶ月から半年程度が目安となります。手術を行った場合は、再建した靭帯が骨としっかり馴染むまで、競技復帰には8ヶ月から1年程度かかるのが一般的です。当院では患者さんの目標に合わせたリハビリ計画を立てていきます。
Q3. 普段の生活で気をつけることはありますか?
A3. 膝を深く曲げながら捻る動作は、靭帯に大きな負担をかけるため避けるようにしましょう。また、内ももの筋肉が衰えると不安定性が増すため、当院で指導するリハビリメニューを継続することが大切です。体重管理も膝への負担を減らす上で非常に有効です。
院長より
膝の痛み、特にお皿周りのトラブルは「どこに行けばいいかわからない」と悩まれる方が多い疾患です。内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)損傷は、若年層のスポーツ選手から、もともとの骨格の影響でお困りの方まで、幅広い世代に見られます。私は、神戸大学医学部を卒業後、20年以上にわたって整形外科の臨床現場で膝関節治療に没頭してきました。
私たちが大切にしているのは、患者さんの声をじっくり聞き、その方の人生において「膝の健康が何を意味するのか」を理解することです。プロのアスリートであれば一刻も早い復帰を目指し、高齢の方であれば安心して散歩ができる膝を取り戻す。それぞれのゴールに向かって、整形外科専門医として科学的根拠に基づいた最善の治療を提供します。
